一般的に、90度よりゆるい傾斜の壁をスラブと呼んでいます。
強傾斜の壁と比べて腕が疲れにくいので、初心者の方にも挑戦しやすい壁ではないでしょうか。
この記事では、スラブの魅力とその上達方法をお伝えしていきます!
スラブの魅力
スラブ壁では、他の傾斜の壁では味わえない魅力がたくさんあります。
一緒にスラブの魅力を確認していきましょう!
日常では味わえないハラハラドキドキ感
スラブ壁にある課題は、腕の力を使わない分、脚の重要性が高いです。
気を抜くと足を滑らせて落下しますし、不意に落ちるので恐怖を感じることも多いです。
スラブ課題を登っている時のハラハラ感は、普通に生きているとなかなか味わえません。
ただし、その恐怖ゆえに、登れた時の達成感は格別です。
ヒリヒリとした緊張感が、完登した瞬間一気に開放されるあの感覚は、スラブ独特の快感ですね。
バランス感覚が鍛えられる
スラブ課題では、高いバランス感覚を求められることが多いです。
特に高グレードになってくると、ノーハンド(手を使わずに登る)のパートが出てきたり、意味がわからないくらい薄いホールドの上に乗らなければならない場面が出てきたりします。
こういった課題にトライするにつれて、どんどんバランス感覚が養われていきます。
他のスポーツをされている方であれば、スラブで鍛えたバランス感覚が生きる場面もあるのではないでしょうか。
初心者でも触れやすい
スラブ課題は腕にかかる負荷が少ないため、まだ筋肉が鍛えられていない初心者であっても取り付きやすいはずです。
他の傾斜と比べて疲れにくい分、登れない課題に何回も挑戦しやすいので、「初めての◯級(最高グレード)完登はスラブ課題だった」という方も多いのではないでしょうか。
スラブの上達方法
ここからは、筆者が考えるスラブの上達方法をお伝えしていきます。
少しレベルの高い内容も含まれていますが、頭の片隅に入れて軽く意識しておくだけでも大丈夫です。
とにかく登る
スラブに限った話ではありませんが、やはりたくさん登ることが上達への近道です。
スラブ課題は他の傾斜と比べて疲れにくいので、何回もトライしやすいです。
同じグレードの課題であっても、強傾斜だと5回しかトライできないけどスラブだと20回以上トライできる、なんてことはざらにあります。
トライ回数はそのまま経験値に直結しますので、スラブは他の傾斜と比べて上達していきやすいはずです。
何度も何度もトライすることで、スラブ独特のクライミング感覚を養っていきましょう。
点でホールドに乗る意識
初心者の方は足の裏全体でホールドに乗ることが多いですが、つま先立ちでピンポイントに乗ることを意識しましょう。
足の裏全体で乗ってしまうと、逆に力が入りづらいですし、体勢を変えるのがかなり難しくなります。
この写真をごらんください。
これは筆者が実際に使っているシューズを裏から見たものです。(アンパラレルのTNPRO LV)
筆者はだいたいこの4点を使い分けてホールドに乗っています。
- シューズの先端部分(親指と人差し指の間あたり)
- 拇指球と親指の腹の間
- 拇指球の真下あたり
- 足の中指と薬指の間あたり
- 中指の付け根あたり
乗る点の場所や数は、その人の足の骨格やシューズの特性、登っている課題によって変わってきます。
なので筆者の乗るポイントを真似る必要は全くありません。
ただ、上達していきたいのであれば、実際に足のいろんなポイントで乗ってみて、あなたにとってしっくり来る場所を探すことが大切です。
乗り込みの感覚を習得する
突然ですが、皆さん階段は登れますよね。
階段を登るという動作は、乗り込みの動きの連続です。
上げた方の足に重心を乗せて、身体を上へと持ち上げているんですね。
階段登りは子供の頃から何度もやってきているので、簡単にできるはずです。
ところが、上げる足がかなり高かったり、横方向への乗り込みなどといった、ボルダリングで求められる動きになると、途端に難しくなります。
上げていない方の脚でホールドを蹴る、重心を乗せる側の脚へ腰を移動させるなど、細かいコツはたくさんありますが、最初のうちはトラバース(壁の中でひたすら横方向へ移動する)をたくさんすると身につきやすいかと思います。
まずは適当なホールドで大丈夫なので、アップ中などにトラバースしてみましょう。
慣れてきたら、手で持つホールドは悪いホールドを選ぶと、トレーニング効果を上げられます。
指を鍛える
スラブは他の傾斜と比べて指の負担が少ないとは言いましたが、実は指力がかなり大事です。
傾斜が緩い分、ホールドを保持しやすいため、指力が強いとそれだけでゴリ押しできる場面が多いためです。
ゴリ押しはあまりキレイな登り方とは言えないかもしれませんが、それでも完登は完登です。
登る過程よりもグレードや完登数にこだわりがある方は、指力を鍛えていくことで目標達成に早く近づけるかもしれません。
ジムにあるトレーニングボードを使ったり、カチ系の課題を多く登ったりすることで指を鍛えて行きましょう。
足首の柔軟性を上げる
経験上、足を甲側に反らす動きが苦手な人はスラブが苦手なことが多いです。
スラブでは重心を下げる動きが求められることがあるのですが、足首が硬いと重心を下げることが難しくなります。
いわゆるヤンキー座りの体勢が苦手な方は、お風呂上がりなどに足首の柔軟性を上げるストレッチをやってみるといいかもしれません。
スラブ以外の壁も登る
短期的に見れば、スラブをたくさん登ることがスラブ上達の秘訣ですが、長い目で見ると傾斜のキツイ壁も登ったほうがいいです。
スラブ以外の壁で養った力やコツがスラブで生きることがあります。
筆者は元々スラブが好きなクライマーでした。
正確には、スラブが得意というより強傾斜がめちゃくちゃ苦手でした。
ところがある時期に「強傾斜に強くなりたい!」と思い立って、強傾斜ばかり登っていたことがあります。
すると、強傾斜を登ることで得た重心移動の感覚やバランスの取り方が、スラブで生きる場面が出てきました。
目先の課題やグレードにこだわることも大事ですが、いろいろな課題を登ることで、ボルダリングの楽しさにより奥行きが出てくると思います。
まとめ
スラブ課題は、独特のバランス感覚や緊張感を求められるため、非常に奥深く、面白いです。
スラブが上達すると、いわゆる「上手い」登りが身につくと思います。(対義語は「強い」登り)
「◯◯さんって上手いですよね!」そんなことを言われるよう、一緒にスラブマスター目指して頑張りましょう!